モグラ談

40代のリベラルアーツ

2021-01-01から1年間の記事一覧

【本】俺は死ぬまで映画を観るぞ(四方田犬彦)

書籍情報 今年は四方田氏の文章をよく読んだ。ウォッチリストにもいろいろ登録させて頂きました。感謝。 しっかり映画評論する人がいない、という著者の嘆きに同意。映画に限らず、批評・評論の世界はいったいどうなっている!?文章も映像も絵画も演芸もすべ…

【映】ローマの休日(NHK BSP:2021/12/31)

作品情報 テレビをつけたらやっていた。なっくんを膝に鑑賞。1953年、ウィリアム・ワイラー作、118分。新人だったヘプバーンは本作でアカデミー主演女優賞。 わかっているのにどきどき、みているほうが少し恥ずかしくなるような、でも気分は昂揚。なにも難し…

【本】インパクト評価と社会イノベーション(塚本一郎・関正雄 編著)

書籍情報 来年はESG、SDGsの実践レベルでの話題が盛り上がりそう。技法から実用を覗こうということで、類書再読含めまとめ読み。 サブタイトルは、“SDGs時代における社会的事業の成果をどう可視化するか”。一方、読んでみると、本著でも繰り返し述べられてい…

【映】はちどり(Amazon Prime:2021/12/30)

作品情報 2018年韓国・アメリカ合作、キム・ボラ監督長編デビュー作。138分。 1994年のソウル。アメリカでワールドカップが開催され、金日成が死に、ソンス大橋が落下した年。14歳の感受性。 人を求めることの様々なかたちを親密に描く。空気感が伝わってく…

【映】トム・アット・ザ・ファーム(Amazon Prime:2021/12/27)

作品情報 2013年カナダ・フランス合作。グザヴィエ・ドラン監督・主演。観ようと思って観られてなかった監督。“私はロランス”と迷い短いほうのこちらを鑑賞。100分。 美しい顔、束感ある流れる髪、若干の病的を感じさせる肌、それが性別を超えたエロスにつな…

【映】アデル、ブルーは熱い色(Amazon Prime:2021/12/26)

作品情報 ウォッチリストから一作。2013年パルムドール。アブデラティフ・ケシシュ監督。 瑞々しい。二人の女優、アデル・エグザルコプロスとレア・セドゥーのまなざし、微笑、ためらい、会話の間に生まれる時間。美しい。 ボロネーゼを食べる、ワインを飲む…

【美】篁牛人展 昭和水墨画壇の鬼才(大蔵集古館:2021/12/22)

開催情報 日曜美術館でみて訪館。はじめての大倉集古館。中国古典様式の建物は、こぶりながら落ち着きあるオリエンタル。金剛力士の木像がお出迎え。 酒と孤独を愛した異色の水墨画家。「渇筆」という技法は、麻紙をけばだたせ、独特の印象を与える。紙に絵…

【映】雄呂血(Amazon Prime:2021/12/19)

開催情報 ウォッチリストから一作。阪妻主演、牧野省三総指揮。妻三郎没後、弁士の松田春翠がフィルムを譲り受け、現在、パブリックドメイン(wiki)。 “無頼漢(ならずもの)を称する者、必ずしも真の無頼漢のみに非らず。善良高潔なる人格者と称せらるる者…

【音】ナイトタイム・パイプオルガンコンサート(東京芸術劇場:2021/12/16)

作品情報 大分前に予約していた楽しみがついにきた。はじめての東京劇場パイプオルガン。オルガニストは小林英之さん。演目は、バッハ、レールンドルファー、レーガー。 荘厳。そびえるようなオルガンはまるで神の世界につながるゲートのよう。通奏低音が脳…

【演】新宿末廣亭 十二月中席(2021/12/15)

作品情報 年末風情で、再び末廣亭。平日なのに、長蛇の列。聞けば、伯山目当てとのこと。youtubeおそるべし。なんとか二階席に落ち着く。 この日は、トリの伯山のほか、神田阿久鯉、松鯉と、講釈師3名。どの方もあじわい深い。松鯉さんの「道灌・山吹の花」…

【映】さらば愛しきアウトロー(Amazon Prime:2021/12/12)

作品情報 ウォッチリストから一作。原題 ”The old man & The gun”。2018年のアメリカ映画。主演ロバート・レッドフォード。監督のデヴィッド・ロウリーは、セインツで本作出演のケイシー・アフレックを主演に。「え、トムウェイツ出てたの?」と見終わって気…

【映】鑑定士と顔のない依頼人(Amazon Prime:2021/12/11)

作品情報 ウォッチリストから一作。一流オークショニアの孤独と愛がもたらすサスペンス。原題 “The offer”。2013年イタリア映画。監督のジュゼッペ・トルナトーレは、ニュー・シネマ・パラダイス、海の上のピアニストなどで有名。音楽は同士と組むことが多い…

【句】令和3年12月

澄みわたる小川流るる柿落葉陽光や照らす冬ざれありがたさ木洩れ日に気持ちほぐれる小春かな白き息白き花弁に重ねみる雑炊の湯気越しにみる子の笑顔

【美】ゴッホ展 響き合う魂 ヘレーネとフィンセント(東京都美術館:2021/10/26)

作品情報 ゴッホ作品の世界最大の個人収集家が館長を務めたクレラー=ミュラー美術館のコレクションから展示。あわせて印象派前後の作品も。ルドンのキュクロプス、はじめて生でみた。 素描の展示充実。ゴッホの描いた手に目が行く。力強さ、エネルギーの流れ…

【映】竜とそばかす姫(TOHOシネマズ日比谷:2021/11/21)

作品情報 【概要・雑感】 気が向いたので映画館へ。こういう映画の見方好き。事前情報なしでみて、美女と野獣のオマージュ的作品であると知る。 さらけだす勇気。前に踏み出す勇気。勇気という人の持つすばらしさに心うたれる作品。 細田監督は女子中高生が…

【美】塔本シスコ展 シスコ・パラダイス(世田谷美術館:2021/11/7)

作品情報 【概要・雑感】 銀杏がだんだん色づいてきた11月初旬。散歩がてら世田美に。こちらも最終日かけこみ。サンフランシスコ行きを切望した養父の夢が託され、命名シスコという本当の話。48歳で筆をとる。 「描きたいから、描きたいものを、描きたいよう…

【美】GENKYO 横尾忠則(東京都現代美術館:2021/10/17)

作品情報 【概要・雑感】 サブタイトルは「原郷から幻境へ、そして現況は?」。全貌をいちどにみられるありがたい機会。最終日にとびこみ。 原色、コラージュ、シュール、三島、説明的・暗示的なタイトル、放り込まれぶつかりあう異空間、調和を許さない流線…

【演】新宿末廣亭 十月中席(2021/10/13)

作品情報 【概要・雑感】 神田松之丞が襲名し、ますますチケットがとれなくなっているところ、なんと登壇しているではないですか。ということで、仕事をはやめに切り上げて新宿三丁目へ。 はじめての末廣亭。感動の一言。Beyond Disney。これは残さないとい…

【美】ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ(SOMPO美術館:2021/7/22)

作品情報 【概要・雑感】 連休なので、と調べたところ、バルビゾン好き、風景画好きにはたまらない企画をやってるではないですか、ということで早速鑑賞。“コローやクールベ、バルビゾン派から印象派まで、フランスの近代風景画をたどる展覧会です。” パリ北…

【映】花様年華 (prime video:2021/07/21)

作品情報 【概要・雑感】 ウォッチリストから一作。我が青春のウォン・カーウァイ作品、撮影クリストファー・ドイルのペア。マギー・チャンとトニー・レオン。トニー・レオンはカンヌで主演男優賞。 時と音を調合した映像美、映さないことで想像を誘う実験的…

【美】百花繚乱-華麗なる花の世界-(山種美術館:2021/6/26) 

作品情報 【概要・雑感】 毎回すばらしい企画。My most favorite museum!開館55周年記念展覧会。古径、土牛、蓬春、青樹、御舟などなど。心洗われた。大満足。 古径の葉や茎にみる淡く流れるような薄緑と輪郭。傾く構図が不安定さと同時に動きを感じさせる…

【句】令和3年6月

青々と燃ゆる緑や初夏の梅母子つなぐ捕虫網かな夏子立蜜蜂や輝く産毛縞の河(※)噴水や水面打つ音はしゃぐ稚児暑き午後稚児の黒髪照る日差し青緑に外すイヤホン新世界夏木立飛び立つ小鳥足止める昼下がり鴉鳴く声そよぐ風(※)時鳥広がる夏野午後の二時河川…

【句】令和3年5月

連休からにわか俳句をはじめてみる。自然や心情を定型の中で分節してみる、というのはなかなか味わい深い。勉強が必要。 朝涼に太極拳や動き出す 葉脈や娘の成長柏餅 笹粽まっすぐ育てなめらかに 子どもの日祝い祝われいつまでも 鯉のぼり役目果たしてしたり…

【本】西洋音楽史(岡田暁生)

書籍情報 【概要】 “新書で通史”の一環で読了。 著者は、京大人文科学研究所の音楽学者。本著は、18世紀から20世紀初頭までのクラシック音楽を内包する、中世から現代に至る西洋音楽の通史をわかりやすくコンパクトにまとめたありがたい一冊。 【ポイント】 …

【映】暗数殺人 (prime video:2021/05/04)

作品情報 【概要・雑感】 蓮實重彥の新書を読み、ひさしぶりに映画でもと思い、ウォッチリストから一作。2019年のキム・テギュン作、チェイサーのキム・ユンスクが刑事役、チュ・ジフンが連続殺人犯役。 韓国クライムサスペンスとして、安定したストーリーと…

【美】平山郁夫展(成川美術館:2021/4/8)

作品情報 【概要・雑感】 春の箱根。恩賜公園でマメザクラとホトトギス、杉並木をとおって成川へ。平山郁夫の収蔵作品を一挙公開。春草、御舟につらなる代表的日本画家。藝大学長、美術院理事長、ユネスコ親善大使等々、活動の人でもある。日本画を、“東洋画…

【美】狩野派と土佐派 幕府・宮廷の絵師たち(根津美術館:2021/3/26)

作品情報 【概要・雑感】 年度末、一息ついたので、仕事帰りにぶらり。はじめての根津美術館。落ち着ける庭園、美しい建築。豊かな時間、空間を感じられる都心の美術館。那智の滝図と燕子花図屏風を所蔵。 ともに室町に始祖を持つ狩野派、土佐派。所蔵の両派…

【美】20世紀のポスター[図像と文字の風景](東京都庭園美術館:2021/2/27)

書籍情報 【概要・雑感】 目黒川沿いを散歩しながら美術館巡り。郷さくら美術館→目黒区美術館→庭園美術館。桜は芽がほのかに心を開きはじめたかな、という丸み。とても気持ちいい1日。 郷さくら美術館は、昭和から現代の日本画を展示。こぶりな建物、清潔な…

【本】チャンドラーあれこれ(春樹訳)

書籍情報 【概要・雑感】 ハードボイルドでも、と思いチャンドラー。村上春樹がチャンドラーから影響を受けたためか、春樹訳だからか、春樹作品を読んでいるような錯覚感多々あり、でもやはりそこはフィリップマーロウ。 春樹訳は中毒性が高い。「ロング・グ…

【本】難民と市民の間で -ハンナ・アレント『人間の条件』を読み直す(小玉重夫)

書籍情報 【概要・雑感】 著者は、教育哲学、アメリカ教育思想、戦後日本教育思想史の専門家。本著は、ハンナ・アレントの「人間の条件」を、前著「全体主義の起源」との関係を意識しながら、現代の公共性や教育問題にひきつけて読み解く。 社会と対置し、国…