【美】 シュルレアリスムと絵画-ダリ、エルンストと日本の「シュール」(ポーラ美術館:2020/03/22)
【概要・雑感】
- ポーラ創業家2代目の鈴木常司が40数年間にわたり収集した、西洋絵画、日本の洋画、日本画、版画、東洋陶磁、ガラス工芸、古今東西の化粧道具など総数1万点を所蔵、2002年開館(ポーラ美術館HP)。緑に囲まれ、ブナ・ヒメシャラが群生する森林には遊歩道が設置。
- 詩人アンドレ・ブルトンによるシュルレアリスム宣言(1924)が出発点とされるシュルレアリスム。エルンストの百頭女をはじめ、ダリ、キリコ、マグリット、デルヴォーなどを展示。日本画家では、古賀春江、三岸好太郎など。第一次大戦の悲劇を背景に、理性や日常性の論理・合理性を否定し、無意識や偶然性に信頼を置くといった思想的背景をもって生まれたヨーロッパのシュルレアリスム。無意識や偶然性への信頼の背景には、フロイトの精神分析があった。科学が思想や芸術に影響を与えた20世紀前半のダイナミズムを感じる。
- 日本では幻想的・超現実な表現技法として受け入れられたこと、そこで生まれた観念は日本が特色を持つ特撮やアニメに受け継がれていったとする見方に納得。ウルトラマンのキャラクター制作者がシュルレアリスムの影響を受けていたというのは面白い。
- コレクション企画は、モネ、ルノワール、ピサロ、スーラといった印象派を中心に、セザンヌ、ゴッホ、ピカソ、シャガール、カンディンスキーなど著名な画家の作品をそれぞれ1-2点展示。日本の洋画は、黒田清輝の“野辺”、岡田三郎助の“あやめの衣”などの名作を展示。
【もう1冊】
- ポーラ美術館名作選(図録)(ポーラ美術館学芸課長・学芸員,2017,ポーラ美術振興財団)
- 絵を見る技術 名画の構造を読み解く(秋田麻早子,2019,朝日出版社) ⇨タイトルのとおり、絵の見方を技術的に紹介してくれるありがたい本。画家は観る者の焦点を意識して構成し、色使いや構造にも意図が埋め込まれている。事例として豊富な作品が紹介されており、なぞって読むだけでも楽しい。