【美】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(国立西洋美術館:2020/7/10)
【概要・雑感】
- 現地での感動を再び、ということで鑑賞。予約制でとても落ち着いて観れた。すばらしいシステム!音声ガイドは俳優の古川雄大さん。
- ナショナル・ギャラリーは1824年創立。ルーブルで行われていたように名作の模写機会を提供しよう、ということでロイヤルアカデミーの会員などが議会に働きかけたのがきっかけらしい。コレクションが美術愛好家からの寄贈品によるところが大きいのも特徴。有志による教育機関としての美術館創立の流れは、王室を持たないアメリカのメトロポリタンやボストン美術館につながっていく。
- 本展は、“世界初開催、すべて日本初公開“(チラシ)。イタリアルネサンスからポスト印象派までの61点を展示。クリヴェッリ(聖エミディウスを伴う受胎告知)、フェルメール(ヴァージナルの前に座る若い女性)、レンブラント(34歳の自画像)、モネ(睡蓮の池)、ゴッホ(ひまわり)あたりが日本でも有名な作品。コンスタブルの乾草車とルーベンスがなかったのが残念だったが、大満足。常設展に立ち寄りルーベンス(眠る二人の子供)で慰め、睡蓮を見比べる。
- イギリスの美術は、大陸の一足後ろを歩き、大陸の美術を受け入れながら成長していった。ヴァン・ダイクから広がっていった肖像画が、市民階級の台頭した18世紀にカンヴァセーション・ピースと呼ばれる団欒肖像画や、古典美術を取り入れたグランド・マナーと呼ばれる歴史画風肖像画につながっていった経緯、グランド・ツアー(貴族子弟の修学旅行。ローマ、ヴェネチアが人気)で旅の記念にと需要が高まった風景画が、コンスタブルやターナーを経て印象派につながっていく流れなど、美術史的にも興味深かった。
【もう1冊】
- 教養のためのロンドン・ナショナル・ギャラリー(木村泰司,2020,宝島社新書) ⇨訪館1週間前に書店で発見し、ご縁を感じて購入。本展で公開していないものも含め多数の作品をカラーで紹介。解説も平易。コンパクトがよい方は図録よりこちらをお薦め。
- The NATIONAL GALLERY A Quick Visit(The NATIONAL GALLERY,2009) ⇨公式図録もネットで購入可能。80頁程度のほどよいサイズ。
- 楽園のカンヴァス(原田まは,2012,新潮社) ⇨原田さんの小説には突如涙腺をこじあけるなにかがある。多作につき迷うところだが、本作はアンリ・ルソーの作品をめぐる絵画ミステリー。山本周五郎賞受賞作。
- エレファントマン(デビット・リンチ,1980) ⇨ロンドンの映画といえば、トレインスポッティングやブリジット・ジョーンズの日記もよいが、やはりこの作品か。“I’m John Merrick, Can you be my friend?”(うる覚え)のシーンは切なすぎる。4K修復版公開中らしい。