モグラ談

40代のリベラルアーツ

【本】一千一秒物語(稲垣足穂)

開催情報

【概要・雑感】

  • 松岡正剛氏の書評でえらく推されていたので読了。
  • なんという世界。小説なのか詩なのか、ストーリーに解釈が必要なのか。そうしたものを超越して、書くということは、ここまで自由と広がりの可能性を持っているのか。孤独、静寂、暴力、唐突のメルヘン、あるいはハードボイルド。
  • 多くのSFは外部の世界を虚構する。登場人物の心情、欲望、動機、社会の規範は現代の読み手の理解の範囲にとどめられる。本著にはそれがない。なので不思議、だから気になる、だけど惹きつけられる。
  • 著者の稲垣足穂(1900-1977)は大正末から昭和後期に活躍した小説家。芥川は本著に対し、「大きな三日月に腰掛けているイナガキ君、本の御礼を云いたくてもゼンマイ仕掛の蛾でもなけりゃ君の長椅子には高くて行かれあしない」と寄せたとのこと。ここからも本著の夢幻性がうかがえる。

 

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