モグラ談

40代のリベラルアーツ

【美】The UKIYO-E 2020(東京都美術館:2020/8/27)

開催情報

【概要・雑感】

  • 国内では大衆画として、欧米には印象派画家以来、影響を与えてきた浮世絵。国内で充実したコレクションを有す、太田記念美術館、日本浮世絵博物館、平木浮世絵財団のコレクションを結集し、約450点を展示(春画はなし)。音声ガイドは杉田智和さん、特別トラックゲストに神田伯山さん。
  • 多色刷りの錦絵も美しいが、丹絵(単色の黒摺絵に手彩色したもの)の落ち着いた、限られた色彩の浮世絵もしみじみとよい。一方、黒摺絵、丹絵、紅絵、紅摺絵といった流れをみると、華やかな多色刷りを可能にした錦絵はまさに技術革新。持ち運びができる絵具が屋外での写生を可能にし、印象派を生み出したように、技術と美術は深い関係にある。
  • 音声ガイドで知った、浮世絵あれこれ。
    • 役者絵といえば鳥井派。いまも歌舞伎座の浮世絵は鳥井派の流れを汲んだ絵師によるもの。
    • “見当違い”という表現は、版木に紙を置くときにつけた目印を“見当”と呼んでいたことが語源。
    • 歴史や故事などを題材に当世風に翻案して描いた“見立て絵”。物語を別解釈し、特に皮肉も交えた暗示がなされるが、これが浮世絵の表現の深みや読み解く楽しみを広げた。
    • 錦絵のスターといえば鈴木春信、美人画といえば喜多川歌麿、風景画といえば歌川派、役者絵といえば鳥井派。
    • 北斎富嶽三六景、広重の東海道五十三次が流行した背景には、平和で経済も発展し、庶民が旅行を楽しみにできた時代背景があった。
  • 浮世絵は、絵師、彫師、摺師の分業作業。絵師は有名だが、彫師、摺師にももっと注目があたってもよい気がする。さらに、プロデューサーなる版元の存在は忘れられない。しばしば登場する蔦屋重三郎の人生に学べるものがありそうだ。
  • 役者絵や美人画はいまでいうところのポスターとして流行。当時を想像して、ポスター選びの感覚で作品を見てみるのも面白い。