【本】夏への扉(ロバート・A・ハインライン, 福島正実訳)
【概要・雑感】
- SF小説の御三家は、クラーク、アシモフとハインラインと知り、ハインラインは未読だったので興味を持ち読了。著者(1907-1988)は、アメリカのSF作家。“科学技術の考証を高水準にし、SFというジャンルの文学的質を上げることに貢献。他のSF作家がSF雑誌に作品を載せるなか、ハインラインは1940年代から自分の作品を一般紙に載せ大衆化に貢献”とのこと(wiki)。
- 不遇に見舞われた技術者が、冷凍睡眠(コールドスリープ)とタイムトラベルで過去(1970年)と未来(2001年)を往還し人生を取り戻す。コールドスリープとタイムトラベルをセットに用いるパターンはユニーク。主人公にどんどん共感していく。ラストは爽快。純粋に楽しめる一冊。著者の愛猫家ぶりも満載。なお、本作は海外より日本でとくに評判が高い作品とのこと。
- 1956年の作品。当時からみた2001年の姿は、商用化されたコールドスリープ、ほぼ汎用AI家事ロボットの普及、雨でも濡れない服、料理が冷めない皿、など。
- SFは1940-50年代が黄金時代と呼ばれる。レイチェル・カーソンが“沈黙の春”で科学(化学物質)が地球に害をもたらしうるとしたのが1962年。’40-50年代は(仮に破滅を描く際においても)科学に対する楽観的期待に囲まれた時代空気があり、これがSF人気を支えたのではないか。とすれば、現代の時代空気はなにか?“絆”というやつか。
- 2021年に山崎賢人さん主演で映画化されるらしい。主人公役、あってるかも。
【もう1冊】
- 時間はどこから来て、なぜ流れるのか?(吉田伸夫,2020,講談社)⇨“時間の流れは現実に生起する物理的な出来事なのか?”ニュートン流の時間観を否定し、新たな時間概念を示す。量子論や相対性理論の入門書をてがけてきた著者が時間を物理的に捉えて解説。
- TENET(クリストファー・ノーラン,2020)⇨コールドスリープの映画といえば、スターウォーズ。タイムトラベルといえば、ラン・ローラ・ラン、ドニー・ダーゴ、バタフライ・エフェクトがお薦め。本作は公開初日に拝観したが、ノーランさん、ついていけませんでしたよ。