モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】ツィゴイネルワイゼン(2022/1/30)

作品情報

  • けんかえれじい」がよかったので、清順作品もう1作。「陽炎座」「夢二」につながる浪漫3部作に数えられる。原田芳雄、大谷尚子、大楠道代藤田敏八。スチールはアラーキー日本アカデミー賞作品賞、監督賞。1980年、144分。
  • オープニング、サラサーテツィゴイネルワイゼンが流れる。たっぷり時間を使う。
  • 赤の美、血、漆器、唇、蟹、陰影の中で映える。空間をまたぐ実験的映像。淫靡と官能、乱歩に通じる空気感、水密桃をすする、発疹をさする、眼球を舐める。白昼夢に誘う効果音。清順監督がドグラマグラを描いたらどうなっただろう。
  • 静寂とスロー、突然放り込まれる不条理な映像、北野武につながっていったと想像。
  • こうしたフォーマリズムともシュールともいえる映画が1980年代にでてきたこと。映画史の系譜に位置付けられるのか、偶然か、ポストモダンの顕れか。
  • 気がふれた世界と常に紙一枚で隣り合わせているような。混沌と陳腐に陥る危うさ、美と演技が支える。藤田敏八が抑制する、私立探偵のように。
  • なにが現実で、なにが幻想か。そもそも誰の幻想か、もしかして誰のものでもないのか。ストーリーを追うことは気にせずに観る。どこで結末がきてもよいと思い始める。俳優はいまこの演技が全体の中でどうプロットされるか、どれだけ自覚できただろう。
  • 原田芳雄の不遜、粗野、ジゴロの性根。さまよう姿は、ツィゴイネルワイゼンがジプシーの民謡歌に源流をもつことを想起させる。
  • 後半は怪談調。まとめない終わり方もありだったかなと思う。

“あなた、わたしの骨が好きなんでしょう”