モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】たかが世界の終わり(グザヴィエ・ドラン)

  • ドラン作品。英題は、It's Only the End of World 。2016年、99分、カナダ・フランス合作。レア・セデュー、ヴァンサン・カッセル、私はロランスのナタリー・バイ、エディット・ピアフマリオン・コティヤールといった面々。主演のギャスパー・ウリエルは本作でセザール賞。本年、事故で逝去。今後も期待したい名優だった。残念でならない。
  • わけがあり家をでてから12年ぶりの帰郷。自分の余命を伝えるために。“僕という存在の幻想を残すために”家族に再開することを決める。本来的時間。
  • 静かな映画。美しい色彩。静寂のマティス、という印象。マニュキュアの青、水色の瞳、さしこむ夕日、ラディッシュの赤、街路樹の緑、掛け時計の茶色。
  • ドラン作品の主題、自分との対峙、表現、関係の再構築、必要な決壊、新しい世界への希求、孤独とつながり、やさしさと諦観・・・
  • 主人公のルイは、ひとりひとりと話をする。妹、義姉、母、兄。どこか告白的で深刻な会話。アップの描写がきわだって多いことに気づく。会話の間が生む静寂が重みとなる。青みがかった室内の空気が静寂を保つ。
  • 訪れた1日の家族との会話ですべてが描かれる。観ているものになにか重たい塊のようなものを感じさせつつ、惹きつけ続ける。
  • ラスト。使いが現れ、我に返らせる。なるべき以上でも以下でもない風景にいることに気づいて踵を返す。
  • ドラン作品、見終わったあとも、しみじみ残る。鑑賞中に包まれた監督の魂がどこかに残されているような。

“理解できない。でも愛している。あなたへのこの愛は誰も奪えない。”

作品情報