モグラ談

40代のリベラルアーツ

【音】都響 第953回定期演奏会Aシリーズ:小泉和裕(2022/06/13)

  • 待ちにまったはじめての東京文化会館。朝からわくわく。
  • 1961年竣工の建物は前川國男設計。打ちっぱなしコンクリートに、落ち葉をイメージしたタイル床、舞台両袖の大小さまざまのブナ材レリーフが独特の雰囲気をつくる。座席幅はきゅうきゅう。加藤周一は、 “建築の建つ立地を利用して人々に空間を開放し、建築内外にレベルの異なる小都市のような広場を設ける”前川の設計手法を“戦後日本の近代建築における一つの到達点”と評した、とのこと。
  • 演目は、メンデルスゾーンの“宗教改革”とベートーヴェン交響曲第3番(英雄)。指揮の小泉和裕は、都響の終身名誉指揮者。地方の楽団の育成にも尽力。“交響曲のような構成力の強い曲に定評があり、また協奏曲の伴奏も評価が高い“(wiki)とのこと。
  • メンデルスゾーンの“宗教改革”。なかなか日の目をみなかった曲らしい。同日、偶然、名曲アルバムでパッヘルベルのカノンを聴く。パッヘルベルルター派の影響を受け、コラール前奏曲の発展に貢献。はじめて聴いたが、時折顔をみせるメンデルスゾーンの流麗感。
  • 指揮者の登場で空気が引き締まる。小泉氏の指揮にみとれる。流れるように、ときに切り裂くように、音波を集めて、優しく包み、束ねて、昇華させる。音塊を持ち上げ、はらい、放ち、運び、おさめていく。演奏者の意識をひきつけ、惹きだし、抑制し、全体として組み立て、聴衆を未知に連れていく。指揮をするという営為。オケの魅力発見。
  • 紡がれた音波は聴衆の耳に、ホールの壁に吸収され、消えていく。生んで届ける、というその瞬間を創ることをすべてとする演奏という営為に感慨。

演奏会情報