モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】曽根崎心中(増村保造)

  • ウォッチリストから。増村監督×ATG。梶芽衣子がお初、宇崎竜童が徳兵衛役。1978年、112分。
  • ATGは、アート系作品の普及を目的に、川喜多かしこの活動を契機に1961年発足。大島渚、羽仁進、今村昌平森田芳光などを育て、支え、1992年に活動停止。
  • 増村は、イタリアでフェリーニヴィスコンティに学び、溝口や市川崑の助監督として参加。若尾文子出演作も多し(卍、刺青)。
  • 本作は、近松の世話物浄瑠璃代表作。醤油屋手代の徳兵衛と女郎お初の心中話。“侍は意地で切腹。女が好いた男と一緒になれない意地で自刃しなにが悪い”と、徳兵衛に迫るお初。梶の狂信すれすれの情愛、常時思いつめた白眼が終始映画の緊張感を維持する。
  • エゴとエゴがぶつかりあう、明快な構図とストーリー。それだけにセリフ一つ一つに役者と演出の力量があらわれる。どの演者もすばらしい。宇崎竜童の粋もよい。
  • 音楽はモダン。まち場のジャズ。昭和のメロドラマ感あり。そこに古き前衛を感じる。なかなかよい。
  • ラストの壮絶。もはや伝説的。引き込まれる、目をそむけたくてもそむけられない。気づくと強く歯を噛みしめ、まばたきもとまり、観ている眼球に力がこもる。静けさの中で、ものすごい熱量が交錯し、この世から消えていく。

“此の世のなごり。夜もなごり。死に行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜”

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