モグラ談

40代のリベラルアーツ

【美】水のかたち 源平合戦図から千住博の「滝」まで(山種美術館)

  • いつもながら山種さんの素晴らしい企画。千住博氏の滝は一度観てみたかった。広重の名所絵、河原龍子、千住博のほか、土牛、玉堂、青樹、春草、大観、丘人、安田靫彦などなど。
  • 人々の生活と水とのかかわり。雨、霧、雪、渓流、湖畔、浜辺、荒磯、鳴門…。それぞれで様々な捉えようがある。躍動、佇み、恵み、悠久、畏怖、あるいはいつもそこにあるもの。
  • まず土牛の“鳴門”。次いで、広重の錦絵。さまざまな雨模様。ざぁざぁ(大はしあたけの夕立ち)、しとしと(五拾三次大磯&土山)。
  • 玉堂の作品複数。生活を温かくきりとる玉堂の作風に、水というモチーフはなじむのかもしれない。縦長の“水声雨声”は、時間をかけて静かな空中を天から降りてきた雨滴が、山中をしめらせ、水車に流れ込む。自然の営みと生活が接する情景。
  • 千住博の“ウォーターフォール”。観る前は、色彩的なきらめきのイメージがあったがそうではなかった。滝が描かれる、滝と滝つぼのみが描かれる。重力に強く導かれる水流。水面から生まれるしぶきは刹那を伝える。背景の黒に近い濃紺、目を凝らすと吸い込まれそう。限られた色彩、むしろ静謐とすがすがしさと神性を生む。それがかえって日本の原風景とは離れた世界をつくる。
  • 龍子の“黒潮”。7尾のトビウオが海面を舞う。ふんだんに群青を使う。動と静、装飾と写実を一枚に盛り込む。
  • 石田武の“鳴門海峡”。土牛とは異なる鳴門。大作。その場に居合わせたかのような迫力。あるいはそれ以上の美。
  • さまざまな水を観る。霧に惹かれたことに気づく。大地から生まれでる、刹那をまとって漂う、大気に溶け込み消散する。

開催情報