モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】EUREKA ユリイカ(青山真治)

  • Helpless、本作、サッドヴァケーションの九州サーガ三部作と呼ばれるものの二作目。カンヌで国際連盟批評家賞、ノベライズは三島由紀夫賞。2000年、217分!
  • バスジャックに巻き込まれた運転手と兄妹。トラウマから逃れられない人生が出会い、再び歩みだそうとする中、止まない連続殺人事件が影を落とす・・・。
  • ほぼ全編セピアの色調。モノクロ・フィルムで撮影して現像時にカラー・ポジにプリントするクロマティックB&Wという手法(wiki)らしい。虚構感とリアリティのバランスを保持するうまい表現。ずるいともいえるし、ある種、特定のイメージをうみつけるという点で危険な賭けともいえる。
  • この色調と無音の基調がもたらす緊張感と九州弁が本作の通奏低音。方言も含め、言語の選択が作品全体に与える影響に、最近、目が向く。
  • 冒頭のバスジャックの犯人の演出に、ステレオタイプの異常性を感じてしまうが、全編を通じて、運転手役の役所広司の安定した不安定さ、妹役の宮崎あおいの硬質感、兄役の宮崎将の内向と衝動を抱えた表情などが3時間半超えの映画を支える。従兄役の斉藤陽一郎が絶妙なラインの役割と演技。きちんと引き戻して物語を成立させる。
  • 長い。。セピアの風景を視野に捉えながら、自分の、あるいは自分がとりえた心の風景を眺めているうちに時間が過ぎていくが、それにしても長い。意味のある長さとは思えない。音声も聞き取りにくい。監督の意図か、プロデューサーの編集の力量か。
  • 異なる人生を歩んできたものが、傷につながる同じ経験をしたものが交わり、過ごし、回復していく。誰にも必要な人生の一過程なのかもしれない。
  • 青山監督の作品をきちんと観られていなかった。若手の育成も含め、これからも映画界を支えていってほしかった。しのばれる。

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