モグラ談

40代のリベラルアーツ

【美】畠山耕治 青銅を鋳る(菊池寛実記念 智美術館)

  • 同僚が企画した鑑賞会に参加。陶芸コレクターの菊池智のコレクションを収蔵する同館だが、本展覧会では鋳物を展示。新たな取り組み。
  • はじめての訪館。都心の凛とした佇まい。交友のあった篠田桃紅の作品でお出迎え。館内の内装自体に作品を取り込む。螺旋階段のスロープにガラス作家・横山尚人の作品を、壁面に畠山耕治の作品を。
  • 青銅という日本の工芸界ではあまり扱われない素材を極めた畠山。海外で評価を得、国内でも唯一無二のポジションを得る。
  • 素材と技法から自由になれないという工芸の本質。その中で、美を見出していく。作家性と市場性のインタラクションで自らのスタイルを築き上げていく。
  • 焼き物と鋳物の共通性に思い及ぶ。素材に熱を加え、変容させ、偶発性をときに統制し、ときに委ね、ある種の即興性が表現を豊かにする。
  • 解説を頂いた学芸員さんのお話にうなずきっぱなし。とても贅沢な時間。

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【美】荒井良二のアールぶるっと!(世田谷美術館)

  • ふらりと最終日前日に入館。絵本でお気に入りの荒井良二さんの展覧会と思いきや、世田美収蔵品から同氏がセレクションした展覧会。
  • “子どものように自由に考え、描くにはどうすればいいか”を考え続けてきた、同氏によるセレクション。まずアンリ・ルソーの“サン=二コラ河岸から見たシテ島“。素朴派といわれるルソーは、素朴を探究した世田美の象徴ともいえる画家。本展覧会も、素朴派や正式な美術教育を受けることなく制作されたフォーク・アートやアール・ブリュットアウトサイダー・アートなどを展示。作家の人生は様々。
  • ほぼすべての作品に荒井氏の手書きのコメントが付される。ポップみたい。感じたことを素朴に表現する。感性に共感する。
  • 印象に残った作品いくつか。ロジャー・アックリングは木片に太陽光線で焼き目をつける。草間彌生のコラージュ。表現主義的だがみていて気持ちのよいポスターアートのようなカルロ・ジネッリの“無題”。存在感と迫力と愛らしさに圧倒されるウィリアム・ホーキンズの“バッファロー#6”。エルンストの“ヤヌス”、河了貂(キングダム)の着ぐるみの原型がここに。 荒井良二氏の“花の草”、少女の首元を断ち切るリボン、水色の世界、手元から噴き出すなにか。
  • もっとも目を惹いたのは、イヴァン・ラツコヴィッチの“散在する村落。板ガラスに油彩。輝きと落ち着き。素朴だがシュール。生命があり天啓があり人工がある。眺めれば眺めるだけ、なにかしらの発想が生まれそう。
  • 素朴派としてくくれない様々な画風、技法、自由な発想の広がり・多様さ。一人ひとりの作家が内面に持つ可能性の無限性。心を打つ作品は世界にたくさんあるはず。見つけ出し、意味をつけ、展覧していく取り組みの可能性を感じさせた展覧会。
  • 偶然、館内で荒井良二さんらしき人を見かける。館内の資料室で熊谷守一高橋由一の画集を眺めて帰る。

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【映】預言者(ジャック・オーディアール)

  • 一旦、韓国映画から離れ、ウォッチリストから。「真夜中のピアニスト」のジャック・オーディアール作品。カンヌ(09)グランプリ。主演のタハール・ラヒムは本作でセザール賞の主演男優賞受賞。
  • 6年の服役となったアラブ人青年マリクは、所内のコルシカマフィアのグループに関わるようになる。コルシカ人とアラブ人の対立の中で生き抜いていく・・・。
  • 自らが殺めた囚人がときおり幻想的に登場する。シャガールのように。
  • フランスの刑務所、なかなか放任で、統制が弱く、個室も充実。犯罪統計を見てみると、犯罪率は、日本2.3%、フランス6.67%、アメリカ4.16%(ICPO調査)
  • 盛者必衰の世界。淡々としたノワール。出所後に背後をつけてくる車はにげきれない不穏の暗示。
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【映】国際市場で逢いましょう(ユン・ジェギュン)

  • 国民的作品と聞き視聴。観客動員数1410万人の感動叙事詩。2014年、127分、韓国。
  • 助演のキム・ユンジン「シュリ」と「LOST」でおなじみ。主演のファン・ジョンミンは、一時、ソル・ギョングチェ・ミンシクソン・ガンホに続く実力派俳優と称されたとのこと。初めて観た。
  • 釜山の国際市場を舞台に、朝鮮戦争で引き裂かれた家族を支えてきた長男の一生を軸とする叙事詩。戦後の社会・街並み、経済発展を歩む韓国、それを支えてきたヨーロッパへの移民・出稼ぎ労働者たち。
  • このスケール、スコープは本国での賞を総なめにしてしかるべき、という一作。「ALWAYS三丁目の夕日」を想起。
  • こうした生命力に満ちた歴史は戻りえないものなのかな、経済成長後の社会では、エントロピーはむしろ減少していくこともあるのかな、などとぼんやり。
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【映】魔女(パク・フンジョン)

  • “はやく次作をみたい!”と思わせる久しぶりのバイオレンスアクションの名作誕生。2018年、125分、韓国。
  • 実験施設で育てられた殺人兵器の子供たち。脱走した少女ジュヤン。10数年後、とあることから組織に見つけられ…。
  • 浦沢直樹の「MONSTER」を想起しながら観る。仕組まれたギフテッド。人が人を操作するという狂気、という鉄板の設定。そこに超能力と脳幹に響くアクションシーン。いいね!
  • ジュヤン役のキム・ダミが最高。愛嬌とあどけなさ、冷徹と狂気を宿る三白眼の切り替え。内面に抱えた闇と苦を一瞬で発動させる視線と口角。友人役のコ・ミンシもいい味。ゆで卵をサイダーで流し込む仲良しシーン、いいね。悪玉役のチョ・ミンスは、「嘆きのピエタ」の女優さん。訓練された風吹ジュンのようだな、などとぼんやり。
  • 覚醒し、瞬殺する。「アジョシ」を超えるアクションシーン、「ターミネーター」を超える肉弾戦。
  • 本国では今年6月に公開された続編の賛否様々の模様。
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【映】お嬢さん(パク・チャヌク)

  • 今月は韓国の小説、映画によく触れた一か月。「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク作品。サラ・ウォーターズの「荊の城」(’02)を原案としたサスペンス。2016年、145分、韓国
  • ‘30年代日本統治下の韓国。現地の富豪と日本人令嬢秀子、その財産を狙う詐欺師藤原と詐欺師グループの少女スッキ。それぞれの思惑と愛憎と裏切りが錯綜して物語は進む。
  • 秀子役のキム・ミニは、「夜の浜辺でひとり」(17)でベルリン主演女優賞(韓国初)。スッキ役のキム・テリはオーディションで抜擢。藤原役は「チェイサー」のハ・ジョンウ、そういえば見た顔。
  • チャヌク作品らしいカット、エロスと残酷、赤と黒、様式美、並行して仕組まれた企みを畳みかけるように差し出してくるラストの演出。監督の個性がしっかりと埋め込まれた一作。
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【映】アクト・オブ・キリング(ジョシュア・オッペンハイマー)

  • いつしか登録したウォッチリストから。2012年、121分、デンマークノルウェー・イギリス合作。
  • 60年代のインドネシアで吹き荒れたレッドパージ。ギャングたちも加わり100万人規模の虐殺が行われたといわれる。被害者への取材が禁止された製作陣は、加害者にアプローチ。当時の様子を演じさせる手法でむき出しの生々しさを再現しつつ、加害者たちの意識が変容してく様を描き出す。
  • ドキュメンタリーという過去と今をあぶりだす方法としながら、しかし当時の様子を演じさせることで現在の彼らに変化をもたらし、その変容を描き出していく、というこれまでみたこともない製作技法。
  • むきだしの暴力、原始的だが確実な暗殺方法が再現される。殺人者たちは演じながら当時の自分にのりうつり高揚していく。そこに命の尊厳はみあたらない。老若男女問わない。村ごと焼き尽くす。こんな世界が60年前に行われていたことに無知であった自分にも驚く。
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