モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】大統領の料理人(クリスチャン・バンサン)

  • フランス映画は続けてみたくなる。シェルブールの傘に続き、ウォッチリストから。クリスチャン・バンサン監督、カトリーヌ・フロ主演、2012年、94分、フランス。
  • 片田舎でレストランを営むオルタンス。突然、大統領の私的会合での料理人をつとめることになる。伝統的な男社会の調理場と対峙しながら、食べる人が満足してくれる料理を追及していくが・・・。
  • 主演のカトリーヌ・フロ、今回知ったが、フランスでは功労勲章を受賞するような名優。芯の強さと情の厚さと人間らしい弱さを兼ね備えた魅力。
  • はじめての昼食。さげられた皿を見て、なにか残したか、なにから先に食べたか、そのときの様子はどうだったか、給仕長に真剣に確認するオルタンス。尽くした相手がどう受け取ったかを大切にする原則。
  • はじめは、システム化された伝統に個性が新風を巻き起こす、といったステレオタイプトリックスターのストーリーを予感させるが、そうではなかった。料理を作る相手の顔を見て、満足を提供していくことに仕事の、そして生きることの価値を見出す主人公。料理はアートという主人公。対照として、伝統と技巧を駆使して完璧な料理を“成し遂げる”メインシェフたち。どちらが良い、悪いはあまり強調しない。仕事を通じてなにを得たいか、という職業価値観を主題にしているとも捉えられる。
  • 顧客の満足が確認できない仕事、官僚的な官邸の中での仕事、ハードワーク。いろいろなことに疲れる。辞して新しい環境に身を置く。自分が仕事に求めてきたことが自分らしい生き方であったことを確認する。
  • “逆境だから私は頑張る。人生のとうがらしだ。わかるかね”。大統領の励ましともとれる言葉。主人公はどう受け止めたか、見終わってから考えさせられる。
  • フランスの家庭料理の豊かさ。料理は創造であり芸術。祖母から孫に引き継がれていく。そうしたメニュー、ひとつでも増やしていこう。

“アルカション風に添えるわ。栄養士はくそくらえよ。”

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