モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】狂った果実(2022/2/11)

  • 石原慎太郎原作・脚色、中原康監督、石原裕次郎津川雅彦北原三枝岡田真澄。1956年。モーターボートの名前、“SUN SEASON”。太陽の季節の姉妹作。岡田真澄の二枚目っぷりったらない。
  • オープニングでシリアスな表情でボートをはしらせる若者。背景との合成が不自然だが、逆にコラージュのようで、前衛表現ともみれなくもない。洋上の事件を想起させ、アランドロンの“太陽がいっぱい“に思考が飛ぶが、こちらは1960年作品。
  • 前半、セリフの棒読み感に驚くが、次第になれてくる。進むにつれ、20年以上前に読んだ原作と重なっていく。逗子の海が記憶を結び付ける。鎌倉の風景。70年前だが、いまも残る面影。
  • 今に不満、アンシャンレジームに不満、経済的に恵まれているため、生活に占められることも、生活に見いだすこともない。そんな若者像をクローズアップで登場人物に代わるがわる表明させる。演劇的な演出。
  • 満たされないが、飢えきることもできない。安全地帯で暴れて小腹を満たすが、すぐに訪れる空腹。人のものが欲しくなる。満たされない内なるなにかを言語化できれば、変われるのか。
  • ラストで一気に作品を昇華させる。愛憎が対象から離れて暴走する。周回するボート。上空からのショットは、まるで人食い鮫に囲まれた筏のよう。これ以上ない結末。

“その退屈が俺たちの城ってもんだ。今にそん中から何か生まれてくるんだろう”

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