モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】暗数殺人 (prime video:2021/05/04)

作品情報

【概要・雑感】

  • 蓮實重彥の新書を読み、ひさしぶりに映画でもと思い、ウォッチリストから一作。2019年のキム・テギュン作、チェイサーのキム・ユンスクが刑事役、チュ・ジフンが連続殺人犯役。
  • 韓国クライムサスペンスとして、安定したストーリーと緊張感。経済的に恵まれ、過去に不幸を抱えつつも屈折せず、悪や不幸をひとつでも取り去りたいとする自然体の刑事像は新鮮。殺人犯の姉との会話で見せる、ふとした人懐こい笑顔が印象に残る。証人尋問での陳述は、人の苦しみを想像することの大切さに気付かせる。犯人役のチュ・ジフンは初見。冷徹と粗雑な野蛮が生み出す狂気のバランスは、これまでにないタイプの知能犯ではないか。ラストの衝撃に突出はないものの、よくしあがったサスペンス。

 

【もう1冊】

  • 韓国映画の最前線(ユリイカ20-05)(2020,青土社)⇨サブタイトルは“イ・チャンドンポン・ジュノからキム・ボラまで”。四方田氏の論評がよい。””韓国ニューウェイブとはローカル映画が体現した、世界化の意志の現われ””韓国映画韓国映画史の文脈ものとに認識し、正面から迎え撃つという日本側の批評言語の向上こそ、わたしには緊急の課題であるように思われる”に共感。
  • 見るレッスン 映画史特別講義(蓮實重彥,2020,光文社新書)⇨帯は “他人の好みは気にするな 勝手に見やがれ”。固有名詞でばんばん称賛、酷評する文章は、御大のなせるわざか。(心の動きより)映像の動きを純粋に捉える視点を再認識。ここぞというシーンを見つける見る側の集中の大切さや、量をみないといけないな、とも。