モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】嘆きのピエタ(キム・ギドク)

  • 思えばはじめてのキム・ギドク作品。ベネチア金獅子賞。2012年、104分、韓国。
  • 暴利で貸付け、障害を負わせ保険金で返済させる取り立て屋のガンド。親を知らずに生きてきたが、突然母親と名乗る女が現れる・・・。
  • ガンド役は、イ・ジョンジン。アイドル風で役から浮いた印象。熱量はあるが、役柄を背負うには弱いか。親と名乗る女性役にチョ・ミンス。先日、「魔女」で拝見。覚悟を決めた表情。羞恥と混乱と復讐心が迫力もって伝わってくる。本性が次第に表情で明らかにされてくる。最期を見通した拷問者のように。
  • 返済者は常に町工場の個人事業主。厳しい生活。IMF危機から拍車がかかる格差社会。工場の機械で障害を負わせる。こうした痛いシーンの描写は韓国映画で確立している。
  • 毛を毟られた鶏、ウナギ、ウサギ、臓物。むき出しのモチーフ。放したウサギが路上で轢かれる。女の登場と受容という変化が生みだす終末を暗示。
  • 中盤で打ち解け始める二人。急速に接近する。一人では生きていけなくなってしまう。この心情変化についていけない。つまりチープ感。
  • “母親”という存在、それが男子に残す心象や影響は国により異なる。オモニの国では想像のつかない世界があると推測。
  • 血のつながりが生み出す愛が欲や格差で歪められていくことの悲哀。これを暴力と復讐で表現する。そんな監督にみえた。2020年コロナで逝去。惜しまれる。

“金ってなんだ?“

”すべての始まりで終わりよ。愛、名誉、暴力、怒り、憎悪、嫉妬、復讐心“