モグラ談

40代のリベラルアーツ

【本】インパクト評価と社会イノベーション(塚本一郎・関正雄 編著)

書籍情報

  • 来年はESG、SDGsの実践レベルでの話題が盛り上がりそう。技法から実用を覗こうということで、類書再読含めまとめ読み。
  • サブタイトルは、“SDGs時代における社会的事業の成果をどう可視化するか”。一方、読んでみると、本著でも繰り返し述べられていることだが、新たに登場したような印象を与えるSROI(社会的投資収益分析)は、長年PJ評価で用いられてきたCBA(費用便益分析)の亜種であり・・・ということで、少し残念。
  • SROIはCBAに比べて、評価デザインや実施プロセスにおける社会的セクターの参加を重視、専門家以外の活用も比較的容易、という長所がある一方、評価指標設定の自由度などからPJ間の比較が困難という短所があり、プログラムの改善ツールとして位置づけられることが多いのが現状。
  • 環境・医療・産業分野などでの事例が紹介されるが、まだまだこれまでのように公共セクター(一部、NPO)中心での利用にみえる。営利法人におけるシビアな目線での導入と洗練が次の大きなハードルと認識した。環境コストの内部化にもチャレンジしたい。

【もう1冊】

  • 社会的インパクトとは何か(マーク・J・エプスタイン他,2015,英治出版)⇨投資対象、取り組む問題、手順、評価、インパクト拡大方法の5つについて解説。5年前の本だが、こちらのほうが包括的で具体的で勉強になった。
  • 社会変革のためのシステム思考実践ガイド(デイヴィッド・ピーター・ストロー,2018,英治出版)⇨ソーシャルセクターで注目されるコレクティヴ・インパクトの実践書。成功の5条件は、①共通のアジェンダ、②共通の測定手法、③相互に補完し合う活動、④継続的なコミュニケーション、⑤バックボーン組織。
  • 未来を実装する(馬田隆明,2021,EIJI PRESS)⇨ものすごいタイトル。帯は、“今必要なのは、「社会の変え方」のイノベーションだ”。社会課題解決、コレクティブインパクトetc.近年話題のこの分野について、考え方、技法、事例とバランスよくわかりやすくまとまっている良書。