モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】帰ってきたヒトラー(デビッド・ベンド)

  • ドイツのベストセラー小説の映画化。ヒトラーが現代にタイムスリップ。コメディでもあり目前に潜んでいる再来への警告でもある。2015年、116分、独。
  • 1945年から2014年にタイムスリップしたヒトラー。偶然、ロケ中のテレビの背景に映り込み、レイオフされた番組制作のフリーランスにかつがれる。非難と賞賛を受けながら、聴衆を感化していく・・・。
  • ヒトラー役のオリバー・マスッチのぶれない演技。ゆるがない背筋と目線。
  • 大戦当時と変わらぬ思想を貫くヒトラー。ぶれない姿勢が描かれる。純血主義は現代の移民問題に投影される。一方で、ドイツのため、国民のためという強い信念。変革への意志が大衆を惹きつけ、共感を得ていく様が描かれる。
  • ドイツの作品ということもあり、ヒトラーあるいは歴史の正当化、印象の操作という批判はあるのかもしれない。ヒトラーが扇動したのではなく、彼が示した計画を国民が選んだことが強調される。ポピュリズムの論理。
  • 実は、現代は容易に全体主義の時代に戻りうる状況にある、ということをつきつけてくる。ポピュリズムの原理は、扇動手段としてのSNS、常にくすぶる移民問題で悪いかたちで発動できる環境にある。欧州の不安定要素が高まる現在、この映画が指摘するところの現実性は急速に増している。
  • ブラックジョークとして一笑にふせない、コメディともドキュメンタリーとも異なる不安感と緊張感を伝えてくる一作。

 

作品情報