【アニメ】約束のネバーランド(白井カイウ、出水ぽすか原作、神戸守監督)
- Primeでちらりと観てはまった。コミックは、2016-2020少年ジャンプ掲載。
- 仕組まれて、囲われて、定められた子供たち。カズオイシグロの”Never let me go“や、押井守の”スカイ・クロラ“を想起するが、本作の設定はスケールが壮大。子供たちの共同体に、15少年漂流記が重なるが、本作は身内で争わない、分裂しない。常に応援の心持ちで見続けられる。
- 1話目からストーリーは急速に展開していく。約束がカナンの地を示すことに気づく。なにかにつかさどられている世界観、隣人愛を大切にする主人公、どこかしらキリスト教的発想をみつけられなくもない。
- 革命家の孤独。殲滅か敗北か。正義を追及すると、倫理は二の次になる。原体験が決定させる。ノーマンが進撃のエレンに重なる。全体ではなく、一人ひとりを観ること、愛することが、苦悩を開放し、未来を切り拓く。エマとミカサの愛がそうさせる。
- キャラクターデザイン。普段はあどけない表情、眼球を点にするだけで恐怖のどん底の表情に切り替わる。制作はclover works。
- 鬼滅、呪術、進撃、喰種、彼岸島、寄生獣。オニや亜人の漫画が好きな自分に改めて気づく。
“それがあなたの本当にしたいことなの?”
【漫】進撃の巨人(諫山創)
- 「第57回壁外調査」でとまっていたものを、amazon primeとコミック併用で読了。いやはや、ものすごい物語だ!構想のスケールに脱帽。2009-2021少年マガジン掲載。
- 人類の再生、亜種との生存競争、父親殺し、始まりの存在、異なる正義の衝突、といった人が紡いできた物語における根源的なテーマ。亜人、過去を抱えた少年少女、マッドサイエンティスト、立体起動装置といった設定と小道具。
- アニメもよい。途中で絵が変わったと気づく。呪術廻戦と似たテイストだなと思ったところ、制作会社がWIT STUDIOからMAPPAに変わったとのこと。鮮明なビジュアル。
- オープニング、エンディングの映像も音楽もよい。特にエピソード4のオープニングのかっこよさ。衝動と破滅、抗えない宿命を感じさせる。“神聖かまってちゃん”の曲、いかしてる。対照的なエンディング。喪失、優しさ、微かな希望。
- ハンジ最高。悩めるリーダー。声優の朴璐美さんのファンになる。
- 一連の叙事詩は完結する。物語のラスト、繰り返される歴史、無常観。本を閉じる、胸をしめる余韻。
“まったく・・・団長になんか指名されたせいで大変だったよ・・・”
【TV】数学者は宇宙をつなげるか?(NHKスペシャル:2022/04/10)
- こんなすごい人がいたのか、と鳥肌がたった。新たな数学世界の創造の時代にある。サブタイトルは“abc予想証明をめぐる数奇な物語”
- 積は素因数分解でその“遺伝子(因数)”がわかるが、和はそうではない。ある数学者が掛け算と足し算の関係を偶然見つける(ABC問題:c/rad(c)<rad(a,b))。その意義は即座に注目されなかったが、これが証明できれば数学上の様々な難問が解決されることを別の数学者が発見(証明に350年を要したフェルマー定理も数行で証明可能に)。16歳でプリンストン入学、23歳で学位取得の天才、若月新一氏(京大数理解析研究所教授)がこれに取り組む。偶然→意味の発見→仕組みの解明、という流れを見る。
- “数学とは異なるものを同じものと見なす技術である”(アンリ・ポアンカレ(1854-1913))が数学世界の原理原則。数の発見、図形と方程式の同定、異なる形状間の変換、数と曲線の結び付け…。数学はこの原理原則に沿って発展してきた。
- この原理原則の中でABC問題に挑む数学者たち。できそうでできない。真理に届かないのは、同じ世界にとどまっているからか。
- 望月博士は、“同じものを異なるものと見なす”世界を構築。極限の抽象化と概念化からおりてくる新たな虚構。足し算と掛け算を分離できる数学的世界を設定する。宇宙タイヒミューラー理論として2012年に発表。当然、学会は紛糾。いまなお議論は続く。
- 足し算と掛け算を分離できないという根本課題の発見、それが既存の原理原則では解明できないことの見極め、解明できる新たな世界の構築。数学以外でも求められる思考の道筋。
- 量子論に通じる認識論の転換を感じる。専門分化による学問の成長に飽和が起きていると気づくこともできる。世界をどう認識するか、という哲学にさかのぼり再構築していく、そんな知の変革の時代に私たちはいる。
- これほどの先端知をプログラムとして制作できるNHKの技量にも感動。
“誰かが望月の理論をわかるように説明する言葉を見つけてくれればよいのですが”ゲルト・ファルティングス博士(マックス・プランク数学研究所長)
【本】熔果(黒川博行)
- 黒川先生の最新刊。堀やん、誠やんコンビが、今度は金塊強奪事件にくらいつく。
- ほかに読む“べき”本があるのはわかってるが、家族の外食の誘いも断り、捧げたかの週末に悔いなし。
- 黒川作品の中毒性について考える。疾走感、タフネス、漫談、因果応報。張り巡らした伏線をきっちり回収する緻密さにもすっきり感。原始的な欲求を追い続ける人間の浅ましさと気持ちよさ。どうひいき目に見ても主人公はひどいし、悪いことばっかりしているのだが、彼らの痛みが自分の痛みのように感じられるのはなぜ。
- このコンビ、疫病神シリーズの二人にすりよって来た感じがしないでもない
“わしは堀やんとふたりでやりたいんや”
【本】アフターデジタル2 UXと自由(藤井保文)
- 仕事の参考にUXの本を何冊か図書館から。 著者はUXコンサル。中国での経験が長く、本著の事例も中国のものが豊富。
- 読書というか、調べもののような読み方をした。2年前の本だが、新事業の世界はこの5年ですっかり様変わりした(UX、デザインスプリント、プロダクトマネジメント、カスターサービス…)
- 以下備忘。そのとおりと思うことばかり。実践の世界。
- 属性データの時代から行動データの時代に。そこでは、人を“状況”単位で捉えることができる。よって、ユーザーの“状況”理解が決定的に重要。“状況”は時系列的な因果の連鎖で発生するため、“出来事”としてではなく、“こんがらがった構造やシステム”として理解すべき
- ユーザーの“状況”により、世界観が決まり、発揮すべき強みが明らかになる。よって、それが定まる前に、ビジネスモデルから先に考えるのは失策
- 商品販売型から体験提供型ビジネスになる。そこでは、日常的な価値提供のために高頻度・定常的な状況把握が基本に
- 体験提供型ビジネスでは、年次の収支ではなく、顧客のLTV(Life Time Value)で捉える(顧客獲得コストの1倍以上の売り上げを18か月以内で確保できると健全という説)
- オンとオフを分けるのではなく、一体のジャーニーとして捉え、これをオンラインの競争原理で考える(≠オフにオンを付加)」(OMO:Online Merges with Offline)
- すべての接点が一つの世界観でまとめ上げられ、そのジャーニーで顧客がずっと乗り続け、企業はずっと寄り添い続ける(バリュージャーニー型ビジネス)
- 世界観の定義(例)「ユニークで心に刺さる、ブランドの見た目、語り口、振る舞い、佇まいについての基本方針とその実装」(佐々木康裕)。一言では、「ジャーニー全体に一貫するコンセプト」
- 動きが速い中国はブラックリスト型(やってはいけないことを決める)、日本はホワイトリスト型(やっていいことを決める)
- 行動変容誘因の法、規範、市場、アーキテクチャーのうち、社会のアーキテクチャーを民が設計できる時代に。よって民はその自覚が必要
- 行動データを自社利益につなげるだけでなく、UXに還元することでユーザーとの信頼関係を作り、提供価値を増幅させることが重要
- UX力の要諦:
- コンセプトフェーズ:①企業のDNAと社会経済のマクロトレンドの理解、②ペインポイントのゲインポイント化(「不幸せな状況」を「幸せなサイクル」に変える“トリガー”をひたすら考える)
- 設計フェーズ:①コア体験・高頻度接点・(ユーザーの)成長シナリオを設計、②自動化する体験
- 更新フェーズ:①ユーザー行動のパターン分析、②仮説・施策結果のモニタリング
- リリースはゴールでなく、アーキテクチャーを動かし、育てていくプロセスのスタート
- DXでは、「単発の事業が成功する」より、「組織としてバリュージャーニーの企画運用ができるようになる」ことのほうがよほど重要
- あわせて「ITエンジニアのためのUXデザイン実践ノウハウ」も借りる。こちらはNTTデータのエンジニアさんたちが執筆。ガイドラインっぽい。こちらも備忘録。
- UXデザインフェーズ例:JJGの5階層モデル(戦略、要件、構造、骨格、表層)
- 通常、人の目線は「F」の字を描く(上部を左から右、少し降りて左から右、最後に左側を上から下)
- CUD(カラーユニバーサルデザイン):色弱では、赤が暗く見えるP型、緑が暗く見えるD型が多い(赤と緑の扱いは注意)
- 様々なチェックリスト:ユーザービリティ(10 Usability Heuristics for User Interface Design)、アクセシビリティ(JIS、みんなの公共サイト運用ガイドライン(総務省))、UX(UXハニカム)
“UXを議論しないDX、顧客視点で提供価値を捉えなおさないDXは、本末転倒である”
【漫】BEASTERS(板垣巴留)
- 完結したらまとめ読みしようと思ってそのままになってた。DMMで大人借り。
- “動物版青春ヒューマンドラマ”という新領域。作者の長編デビュー作、チャンピオン連載(2016-2020)、コミックス全22巻。お父さんは刃牙の板垣恵介氏。
- 肉食草食の分断が常に漂う動物社会。肉草共学の学園を舞台にした恋と成長と正義の物語。出自も個性も異なる主獣公のハイイロオオカミとアカシカの2人。ちょっと違うが“サンクチュアリ”を想起。
- 虚構の動物社会が緻密に設定されている。動物漫画は多々あれど、人間社会と微妙にずらした入念な設定は独特。
- 絵が好き。表情豊か。読んでいてオキシトシンとドーパミンが交互に放出される。ペットショップで癒される感じと、刃牙の戦闘シーンが混じり合ったような、塩味と甘味が交互に来るような。笑いとシリアスの組合せも多々あれど、そこに動物の癒しを持ってくるとは。一気読み必定。
- 好きなキャラ勝手ランキング。3位ジャック、2位ゴーシャ、1位サグワン。
- 最終巻で急速に収束させる。もうすこしいろいろなドラマが展開できたかもしれない。
【美】角川武蔵野ミュージアム(2022/03/16)
- 角川つばさ文庫大好きな娘と訪館。館長は松岡正剛。氏渾身のエディットタウンは一度見たいと思っていた。建築は隈研吾。建築物はまるで巨大なモノリスのよう。壁面には、鴻池朋子の「武蔵野皮トンビ」がお出迎え。
- 独創的な図書空間のエディットタウン、ライトノベルの図書館としては世界一のラノベ図書館、チームラボ×浮世絵の浮世絵劇場、など。
- エディットタウンは本好きにはたまらない空間。足をふみいれると圧倒される本棚劇場に鼓動波打つ。読書欲が刺激される。と同時に、人生でしっかり読める本は100冊くらいだろう、ととある歴史学者がいっていたことを想起する。
- 本のレイアウトは、その人の世界の捉え方ともいえる。ISBNコードとはことなる捉え方を、時には本もされたがっている。そして、こうしたレイアウトは、どの公立図書館でも可能だと思う。
- ラノベ図書館ではコミックを読む。“よつばこ!”と“夢でみたあの子のために”を発見。
- 浮世絵劇場、壁面、床と浮世絵がダイナミックに流れていく。ハンモックに体をあずけて浮世絵を浴びる。プロジェクションマッピングの演出、最近、感動が薄くなってきたと気づく。