モグラ談

40代のリベラルアーツ

【TV】数学者は宇宙をつなげるか?(NHKスペシャル:2022/04/10)

  • こんなすごい人がいたのか、と鳥肌がたった。新たな数学世界の創造の時代にある。サブタイトルは“abc予想証明をめぐる数奇な物語”
  • 積は素因数分解でその“遺伝子(因数)”がわかるが、和はそうではない。ある数学者が掛け算と足し算の関係を偶然見つける(ABC問題:c/rad(c)<rad(a,b))。その意義は即座に注目されなかったが、これが証明できれば数学上の様々な難問が解決されることを別の数学者が発見(証明に350年を要したフェルマー定理も数行で証明可能に)。16歳でプリンストン入学、23歳で学位取得の天才、若月新一氏(京大数理解析研究所教授)がこれに取り組む。偶然→意味の発見→仕組みの解明、という流れを見る。
  • “数学とは異なるものを同じものと見なす技術である”(アンリ・ポアンカレ(1854-1913))が数学世界の原理原則。数の発見、図形と方程式の同定、異なる形状間の変換、数と曲線の結び付け…。数学はこの原理原則に沿って発展してきた。
  • この原理原則の中でABC問題に挑む数学者たち。できそうでできない。真理に届かないのは、同じ世界にとどまっているからか。
  • 望月博士は、“同じものを異なるものと見なす”世界を構築。極限の抽象化と概念化からおりてくる新たな虚構。足し算と掛け算を分離できる数学的世界を設定する。宇宙タイヒミューラー理論として2012年に発表。当然、学会は紛糾。いまなお議論は続く。
  • 足し算と掛け算を分離できないという根本課題の発見、それが既存の原理原則では解明できないことの見極め、解明できる新たな世界の構築。数学以外でも求められる思考の道筋。
  • 量子論に通じる認識論の転換を感じる。専門分化による学問の成長に飽和が起きていると気づくこともできる。世界をどう認識するか、という哲学にさかのぼり再構築していく、そんな知の変革の時代に私たちはいる。
  • これほどの先端知をプログラムとして制作できるNHKの技量にも感動。

“誰かが望月の理論をわかるように説明する言葉を見つけてくれればよいのですが”ゲルト・ファルティングス博士(マックス・プランク数学研究所長)

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