モグラ談

40代のリベラルアーツ

【TV】特集「緊急対談 パンデミックが変える世界〜海外の知性が語る展望〜」(2020/04/16 00:00-01:00 NHK Eテレ)

番組情報

【概要・雑感】

  • 世界規模で混乱を巻き起こしている新型コロナウィルス。これがもたらす意味、将来を識者が語る。イアン・ブレマー、ユヴァル・ノア・ハラリ、ジャック・アタリの順でコメント。目先の混乱への注目・対処は重要であるが、この課題に人類がどのように臨むのかが本質であるとする。
  • ブレマー氏は、かねてより主張する“Gゼロ後の世界”において、国際的リーダーシップ不在により、国際協調は望めない世界が露見したとする(とくに9.11やリーマンショック時と異なるアメリカのリーダーシップのなさを厳しく指摘する)。今後、感染拡大が予期される新興国、途上国は混乱を吸収する力がなく、国際協調による救済が得られないことにより、グローバルサプライチェーン等を通じ、世界的混乱が深まると予想する。
  • ハラリ氏は、今後数か月で世界は大きな政治的・社会的実験を体験し、そこで民主主義が試されるとする。念頭には、混乱に乗じたハンガリーのオルバン、イスラエルのネタニヤフの独裁的態度がある。今回の挑戦に対し、人類がグローバルな連帯、民主的な態度、科学への信頼を通じ乗り切ることができれば、結果的に多数の死者がでたとしても、人類史的には、人類が進化した機会として捉えられると予想する。
  • 10年前に著書にて世界的な感染症拡大を予見したアタリ氏は、今回の混乱を国家がコントロールできなければ、市場と民主主義への信頼が崩壊するという。1918年のスペイン風邪を振り返り、感染の第二波、第三波への対処が命運を分けると考える。必要なのは利他的精神やポジティブな関与であり、これは実は合理的利己主義であるとする。
  • 日々の感染者数、政府の医療的・経済的支援だけでなく、今回の混乱に対し人類がどのように立ち向かおうとしているかという態度そのものへの俯瞰的考察の意義を気づかせてくれた。この混乱は、独裁主義、ポピュリズム、非科学的態度、利己偏重の判断による悪弊が噴出する機会となっている。先進国における第二波以降の混乱、新興国・途上国での拡大とサプライチェーンを通じた世界的不況、コロナ以降も常に生じうる新型ウィルスの脅威が予見される中、求められる連帯とはなにか、どのように実現できるか、ひとりひとりはなにをなすべきかについて、考えさせられた。

 

【もう1冊】

  • 良き社会のための経済学(ジャン・ティロール,村井章子訳,2018,日本経済新聞出版社)⇨経済学と経済学者について考察した書。理論というより考え方が述べられた約600頁の入門書。市場と経済学者に対する双子の不信感が生まれる理由について、学問としての限界と認知バイアスの面から分析。