モグラ談

40代のリベラルアーツ

【美】THE GREATS スコットランド国立美術館展(東京都美術館)

  • 1859年開館のスコットランド国立美術館の作品からルネサンス以降を中心に展示。ラファエログレコ、ベラスケス、レンブラントブーシェ、スーラ、ルノワールなど。習作も多数展示。音声ガイドは天海祐希さん。
  • はいって一枚目、「グラスマーケットから見たエディンバラ城」。そびえる崖上にたつ城、ひんやりと落着きをたずさえた土地。想像をスコットランドに飛ばす。
  • ラファエロの習作「魚の聖母」。天才の筆致、構図とはこういうものかと感じ入る。
  • ダヴィンチの師とされるヴェロッキオの「幼児キリストを礼拝する聖母」。構図や背景の荒涼、交し合う聖母子の視線の温かみにダヴィンチを見る。
  • ヴェロネーゼ「守護聖人アントニウスと跪く寄進者」。ヴェロネーゼは、ティントレット、ティツィアーノにならぶ巨匠。力強い視線が意志を交換する。
  • 一目でわかるエル・グレコ。青ざめた色彩、縦に引き伸ばされた造形。「祝福するキリスト」は正面から見据える。この構図はグレコが過ごしたクレタ島に残っていたビザンチン美術の影響とのこと。グレコは、イタリア語でギリシャ人、の意。
  • バロックでは、レンブラント、ベラスケス、ダイク、ルーベンスなど。え、ルーベンス、習作の1枚だけ??
  • 本展覧会目玉のひとつ、ベラスケスの「卵を料理する老婆」。19歳ころの作品。人々と食卓、台所や居酒屋などを描く“ボデゴン”。ベラスケスが得意とした題材。ガラスの透明、ナイフの影の表現力。老婆が卵を握る指、この微妙な力感の表現、調理具を握る右手、長き人生を象徴するような手首の質感とまがり具合、見入ってしまう。フェリペ二世に仕えたベラスケス、魔法のような筆さばきと称された。
  • ダイクの「アンブロージョ・スピノーラ侯爵の肖像」。品よく肖像画を描かせたら右にでるものはいないと言われたダイク。ルーベンスの右腕だった時期もあり、師をしのぐとさえ言われた。おちつき見据えた視線が品性を生み出す。
  • レンブラントの「ベッドの中の女性」。繊細な感情表現、こわばる表情筋、おびえつつも期待の光が宿る瞳、人生の疲労を感じさせる額の肉感、重厚なカーテンを支える腕の力感。
  • 18世紀の作品は、“グランド・ツアーの時代“として展示。ここにブーシェも展示。最近、ロココが目に留まる。牧歌的な世界で愛を語る。枯れ味のかかった緑、木々の隙間に広がる青空、寄り添う小動物、見つめあう若い男女の視線を主軸に据える。
  • ゲインズバラの風景画、ターナーやコンスタブルにつながっていく。肖像画は、大胆な筆致なのに全体として秩序立つ。
  • 大好きなコンスタブル。展示は「デダムの谷」。画家が愛した土地、風景。濃緑の木々、生命力あふれる土、存在感を示す水面、コンスタブルの好きなところ。自然へのまなざしはバルビゾン派につながっていく。
  • 本展覧会のチラシ表面を飾ったレイノルズの「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」。肌とドレスの白、重厚なカーテンの赤との対比。頬の赤身が媒介する。歴史画への想いを三美神の構図に重ねる。
  • ゴーガンは「三人のタヒチ人」。理性と官能の間に立つ男の後ろ姿。「説教のあとの幻影」は来日叶わず。
  • ミレイの「古来比類なき甘美な瞳」。スミレの花をもつ少女。少女画の本家を感じさせるファンタジー感。ミレイはラファエル前派の創始メンバーのひとりだがのちに脱退。“主題はなくとも純粋に心をうつ絵を目指した”とのこと

私の少年時代はスタウ川の岸辺にあるすべてのものと結びついている。それが私を画家にした。”(コンスタブル)

展覧会情報