モグラ談

40代のリベラルアーツ

【音】日本フィル とっておきアフタヌーンvol.20:太田弦(2022/09/27)

  • サントリーホールのほどよい企画。この回は、モーツアルトのピアノ協奏曲第20番とベートーヴェン交響曲5番。指揮は若手の太田弦さん。ピアノは仲道郁代さん。
  • ピアノ協奏曲第20番、生音で聞いてみたかった。部屋で聞くのとはやはり大きく違う。なめらかで、時折とまどいをみせる旋律。第二楽章はいろいろな演奏がありえると想像する。回想、幻想、希望につかのま身をゆだねるように聴き入る。第三楽章は対比して力づくよく切り裂いていく。モーツァルトは浄化してくれる。オペラが持つ自由で縦横無尽な展開が協奏曲にもみえてくる。
  • 仲道さんの演奏、一音一音の中に言葉、情景、情感が同時に存在する。万華鏡のようにみせてくれる。“一音一音、語るがごとく演奏したい”という想いが伝わる。生まれて瞬時に消えていく、つかまえられない“音”とともにする、演奏という素晴らしさ。
  • モーツァルトが作曲したのは、表現できるオクターヴ数が限られた時代のピアノ。当時の曲をいまのピアノでどう表現するかというのがチャレンジとのこと。なるほど。
  • 登場時の観客の拍手の響きで、そのホールで自分の音がどのように伝わっているか感じられるとのこと。サントリーホールはふわっと包まれるような音響とのこと。なるほど。
  • 太田さんの指揮、小気味よい。小さな体をゆすりながら、テンポよく運んでいく。手のひらをなめらかに、さざ波のように流す。
  • 二曲目は運命。低音で抑制的にはじまる。大音量のホルンが印象的。徐々に力強く全体をもちあげていく。
  • 第二楽章は雄大な風景に出会う旅路を想像させる。自然に囲まれながら、時折内省にひたる道程を感じさせる。第三楽章で世界は厳しさをみせつけてくる。力強く立ち向かっていく。長くて暗い道が続く。光明が見える。たちあがり一気にかけあがる。そんな情景が浮かぶ。後半からエンディングに向けていっきに仕上がってきた。すばらしい演奏。
  • アンコールはベートーヴェン「12のドイツ舞曲」第二番。

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