モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】神々の深き欲望(今村昌平)

  • ウォッチリストから一作。今村昌平監督、三國連太郎主演、1968年、175分。
  • 今村監督といえば、“楢山節考”と“うなぎ”でパルムドール。いずれも授賞式に出席せず、楢山では戦メリの下馬評を覆し話題になった。
  • 土俗の習慣で営まれる南の孤島「くらげ島」。神聖なる神の田を穢したとして自由を奪われる主人公、神事を司る一家と巫女、島を抜け出したい青年、資本の象徴として東京から派遣される技師。それぞれの生と性が交錯する。神話にある近親による国づくりを重ねる。
  • “今村は「豚と軍艦」(1961)や「にっぽん昆虫記」(1963)で、生命力の起源としての女性の大地性を肯定する世界観を固めると、しだいに近代主義のなかで日本人が喪失した前近代の土俗的な情念の世界に魅惑されるようになった”(「日本映画史100年」四方田)。ふむふむ、観念はわかった。
  • オープニングからゆっくりと進む。冒頭、“この映画、いったいなんなんだ”と思う。監督が撮りたいように撮ったと感じる。いまの映画は高度に定型化、標準化された世界での選択になっているのかもしれないとも。
  • セリフが聞き取りづらく、状況設定や人物相関も理解できるまで時間がかかる。ウミヘビ、ナマコ、タコ、トカゲといった粘膜感は、ウナギに通じる監督嗜好のモチーフか。
  • 三國連太郎の粗野感、多襄丸の三船敏郎の処世感を土着感に入れ替えた雰囲気。夕日を背景に、息子役の河原崎長一郎と岩場を歩く姿、美しかった。

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