モグラ談

40代のリベラルアーツ

【映】ペパーミント・キャンディー(イ・チャンドン)

  • 「バーニング」に続いてイ・チャンドン作品。同監督の出世作。1999年、130分、韓国・日本合作。
  • ヨンホ役のソル・ギョングは「殺人者の記憶法」や「悪の偶像」の熱演が思い出される。本作では20代から40代までを演じる。
  • 不穏で、なげやりで破滅的な男、キム・ヨンホ。脈絡ない狂気を漂わせる男の行動が数十分続く。事業に失敗し、金を持ち逃げされ、絶望する男。自分の人生をだめにした誰かひとりを道連れに自殺を考える男。
  • 人生を終えようとする男の一生を遡って表現する。最期の日、3日前、’94、’87、’84、’80、’79。各時代のシーンの区切りに、果てしなく続く線路が写される。その先の時代を暗示する。分岐する、曲がりくねる、長いトンネル、見えかける出口。
  • 1980年は光州事件の年。民主化を求める学生が暴徒として虐殺された年。学生だけでなく丸腰の市民が自国の軍隊に虐殺され、その事実が87年の民主化まで隠蔽された。
  • 写真家になり花の美しさを伝えることを夢みていたヨンホ。愛する女性をみつけたはずのヨンホ。民主化運動の鎮圧側に従軍させられた経験が彼を狂わせていく。運動をけん引した監督の目線。
  • ペパーミント味のキャンディーは彼女との想い出。彼女を愛せた自分の想い出。気づけば浮気相手から口臭消しになめさせられる。
  • ラストにフラッシュバックする。後悔と諦念と悔悛。それでも幸せだった一時の充足。流れる涙が時空を超える。観るものは自分の人生に重ね合わせざるを得ない。