モグラ談

40代のリベラルアーツ

【美】展覧会 岡本太郎(東京都美術館)

  • 晩年のメディアでの露出のイメージが強い岡本太郎(1911-1996)。パリ時代には哲学も学び、抽象主義には流されず、ピカソと縄文に感動し、ひとつの世界を創りあげた偉大な画家。過去最大規模の大回顧展というありがたい機会。音声ガイドは阿部サダヲさん。
  • 彼が掲げた“対極主義”。対立を強調し、その不協和音から創造をみつける。いきついている。
  • 中央から噴き出す、四方に飛躍する。全面でうねる。赤、黒、黄、緑が爆発している。
  • 「森の掟」。寓意的で触発的。シュールであり、コミカルともみれるが、胸に突き刺してくる衝撃は岡本太郎。曰く、“無意味を意識すればこそ真に意味になるのだ”。
  • 「重工業」。対極主義はここから生まれた。抽象と超現実をキャンバスに放置する。一方で、円形や流線が拡散を抑制する。塊を創り、発散させずに観るものにぶつけてくるというか。
  • 彫刻の「女神像」。装飾的であるようで、そぎ落とされている。普遍が感じられる。太郎の彫刻作品は、ユーモラスでユニークであり、なにかしらの調和と対称が見つけられる。絵画とは異なる。
  • 発見されたパリ時代の3作品。多くの作品と異なる画風。低温でうずまく胸中のもやもやがあらわされているよう。
  • 「痛ましき腕」。パリのとどまった18歳の太郎。溢れるエネルギーを抑制できない葛藤を感じる。
  • 「露店」。抽象とシュールの時代。そのはざまで“人間全体として生きる“という想いが生まれる。
  • 「燃える人」。第五福竜丸事件に触発される。ここから核への問題意識が高まる。内に湧き上がるイメージに必死に追いつこうとするかのような筆致。ダイナミズムここに極まる。
  • 渋谷駅に移設された「明日の神話」。原爆というもうひとつの太陽。ゲルニカのように悲愴一色ではない。転生と再生がある。
  • 岡本太郎の画風はfavorite!ピカソセザンヌと重なる境地を超えたなにかがある。
  • “芸術は常に新しくないといけない”“自分一人にしか働かない呪いであってもそれがもしいったん動き出せば社会を根底からひっくり返す”“自分を大事にしたら自分を失う”“死ぬとは衰えることではない。咲ききってどっと倒れる”“血を流しながらにっこり笑おう”。いろいろなものを振り払いながら、内省し、闘ってきた、芸術は人間のすべてと至った太郎の言葉。元気がでる。
  • 別ギャラリーで開催中の「美をつむぐ源氏物語」を眺めて帰る。

展覧会情報