モグラ談

40代のリベラルアーツ

2022-01-01から1年間の記事一覧

【映】スリー・ビルボード(マーティン・マクドナー)

名演技が十二分に引き出された良質なドラマ。フランシス・マクドーマンド主演、本作で二度目のアカデミー主演女優賞。2017年、116分、英。 娘を殺された母親、捜査不十分として所轄署長を路上看板で批判。ガンで余命短い署長、差別意識の強い巡査、同情する…

【映】シェイプ・オブ・ウォーター(ギレルモ・デル・トロ)

「ナイトメア・アリー」がよかったので、デル・トロ監督からもう一作。2017ベネチア金獅子賞、2018年アカデミー作品賞ほか4部門受賞。2017年、124分、米。R15+の大人のファンタジー。 政府の研究所で清掃員として働くイザイラ。研究材料として持ち込まれた魚…

【映】ザ・スクエア 思いやりの聖域(リューベン・オストルンド)

2017年パルムドール。2017年、151分、瑞、独、仏、丁合作。 モダンアートの美術館でキュレーターをつとめるクリスティアン。思いやりの心や平等の精神を表現する作品を通じ、差別や貧困問題に一石を投じる企画を立ち上げる。そんな中、財布とスマホの盗難に…

【映】ナイトメアアリー(ギレルモ・デル・トロ)

デル・トロ作品、「シェイプ・オブ・ウォーター」と迷いまずこちらから。ブラッドリー・クーパー主演。2021年、150分、米。冒頭、久しぶりのSEARCH LIGHT PICTURES(旧21世紀FOX)のオープニングに感動。 サーカス団に流れ着いた浮浪者スタンは職を得て、手…

【映】アンテベラム(ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ)

「ゲットアウト」「アス」のプロデューサー作品ということで期待して視聴。2020年、106分、米。 社会学者として活躍するベロニカ。一方で、南北戦争下で虐げられるエデン。ふたつの物語が併走し、合流する・・・。 中盤までの40分、プランテーションでの虐げ…

【映】オールド(M・ナイト・シャマラン)

ふと思い出し、久しぶりにシャマラン作品。主演のガエル・ガルシア・ベルナルは「ブエノスアイレスの夜」以来なので20年ぶり。お互い年をとったな、と軽い感慨。 家族で訪れたリゾート。ホテルのマネージャーからプライベートビーチに招待される。そこで異様…

【映】ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(ライアン・ジョンソン)

「スターウォーズ 最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督、アガサ・クリスティ作品へのオマージュ、密室もの。探偵役にダニエル・クレイグ。2019年、131分、米。 富豪の小説家の死をめぐる密室ミステリー。警察は自殺と判断するが、匿名から依頼を受け…

【美】故宮の世界(東京国立博物館)

日中国交正常化50周年記念。故宮博物院の名作を主にデジタル映像で展示。 デジタル映像、凸版印刷の技術力、大画面、精細、鮮明、リアリティを失わせるほどの輝度。紙の図版とは比べ物にならない。でも模倣品でもリアリティにはまだかなわないかな、あるいは…

【美】自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで(国立西洋美術館)

リニューアルオープン記念。ドイツのフォルクヴァング美術館の協力を得て開催。急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけ、芸術家たちは新たな知識とまなざしで自然を捉えていった。印象派、ポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100…

【映】プロミシング・ヤング・ウーマン(エメラルド・フェネル)

気になってた一作。キャリー・ハンナ・マリガン主演。どこかでみたことあると思ったら“華麗なるギャッツビー”だった。フェネル監督、初長編映画。しっかりえぐってくる。アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞受賞(2021)。…

【映】グランド・ブタペスト・ホテル(ウェス・アンダーソン)

ジャケレンタル。“ダージリン急行”のウェス・アンダーソン監督。2014年、100分、アメリカ。 わくわくさせる語り口からのオープニング。欧州名門のグランド・ブタペスト・ホテル。季節ごとに予約するかつてのオーナー。ホテルの歴史を訪れた作家に語る・・・…

【映】Us アス(ジョーダン・ピール)

涼をとろうとホラー。“ゲットアウト”で面白かったジョーダン・ピール作品。2019年、116分、米。ピール監督、コメディアン出身。才能豊か。 なんでもない浜辺の遊園地のオープニングなのにすでに不穏な空気に満ちる。日常シーンに緊張感を強いる。冒頭から良…

【本】戦略的思考とは何か(岡崎久彦)

いわゆる最近の思考法本ではない、骨太の戦略的なものの見方を、軍事防衛戦略を主題に解く。名著。 著者は、戦前生まれの外務官僚。調査畑を経て、初代情報調査局長。サウジとタイで大使。祖父は陸奥宗光の従弟。 “日本人は論理的思考が苦手であり、戦争のよ…

【映】今夜、世界からこの恋が消えても(三木孝浩)

嵐から“なにわ”に転向した娘とハンカチ握りしめて劇場へ。2022年、121分。道枝駿佑、福本莉子主演。主題歌ヨルシカ。 一条岬氏のライトノベル原作。韓国でも話題になった。韓国×恋愛×記憶、だと、嗚咽した“私の頭の中の消しゴム”を思い出す。あわせて、記憶…

【映】殺人者の記憶法(ウォン・シニョン)

韓国映画の気分でウォッチリストから。2017年製、118分、韓国。 アルツハイマーにより記憶に障害を抱えるビョンス。子供時代の父親殺し以降、悪とされる人を殺すことで心の善を保ってきた。娘が育ち、殺人から離れたビョンスであったが、猟奇殺人犯との接触…

【映】EUREKA ユリイカ(青山真治)

Helpless、本作、サッドヴァケーションの九州サーガ三部作と呼ばれるものの二作目。カンヌで国際連盟批評家賞、ノベライズは三島由紀夫賞。2000年、217分! バスジャックに巻き込まれた運転手と兄妹。トラウマから逃れられない人生が出会い、再び歩みだそう…

【映】コーダ あいのうた(シアン・ヘダー)

“愛のコリーダ”となぜかオーバーラップしてしまったが全然関係ない作品。まえから気になっていたものをウォッチリストから。2021年、112分、米仏加合作。サンダンスで4冠、2022年アカデミー賞では作品賞を含む3冠。2014年の仏「エール」のリメイク。どちらを…

【TV】NHKアカデミア 細田守

第一線のクリエイターや研究者が職業観、人生観などを熱く、自由に語る番組。細田守監督の回(7/26)はなかなか印象に残る素敵な番組だった。 監督の仕事とは、“作品を全体として面白くする仕事”。そのために全体をデザインする。ひとつの作品に絵コンテ500…

【映】楽聖ショパン(チャールズ・ビダー)

音楽史の読書から派生してアマプラより。1945年、アメリカ、111分。 祖国ポーランドの独立への想いを秘めつつ、天賦の才能をひろげるため師エルスナー教授とパリに向かう。祖国への想いとの葛藤、ジョルジュ・サンドとの出会い、病との闘い。リスト、パガニ…

【美】沖縄の美(日本民藝館)

なかなかタイミングがあわなかった民藝館。旧宗悦邸の西館を拝観できる水曜日に訪問。 民藝の父、柳宗悦(1889-1961)。民衆的工芸品、民衆の日常品に“健康な美”“正常の美”が宿っていることを見出す。倉敷紡績二代目社長大原孫三郎の寄付を受け、念願の美術…

【映】トップガン マーベリック(TOHOシネマズ渋谷)

よかった。観たいものすべて観せてくれた。すべてのシーンが響いた。ノスタルジーに満たされすぎてあふれた。ハリウッドの映画は、よかった、面白かった、すごかった、となぜか表現が貧相になってもどかしいが、本作もしかり。 滑走路でNinjaにまたがり疾走…

【美】水のかたち 源平合戦図から千住博の「滝」まで(山種美術館)

いつもながら山種さんの素晴らしい企画。千住博氏の滝は一度観てみたかった。広重の名所絵、河原龍子、千住博のほか、土牛、玉堂、青樹、春草、大観、丘人、安田靫彦などなど。 人々の生活と水とのかかわり。雨、霧、雪、渓流、湖畔、浜辺、荒磯、鳴門…。そ…

【アニメ】ヴァイオレット・エヴァーガーデン(石立太一)

このためにネットフリックス登録。ラノベ原作の名作。京都アニメーション制作、2018年、13話。一気に観る。 戦闘兵器として育てられた少女。少佐に名前と愛情をもらう。少佐との別れ際に受け取った言葉の意味を理解するために代筆職“自動式人形(ドール)”に…

【映】ゴッホ 最後の手紙(ドロタ・コビエラ/ヒュー・ウェルチマン)

ウォッチリストから。原題は、“Loving Vincent“。ゴッホの死の真相を、生前テオに書かれた手紙を託された若者の旅を通じて捉えていく。全編、油絵風のアニメーション。2017年、96分、イギリス・ポーランド合作。声優は、主役の若者が山田孝之さん、彼に手紙…

【映】曽根崎心中(増村保造)

ウォッチリストから。増村監督×ATG。梶芽衣子がお初、宇崎竜童が徳兵衛役。1978年、112分。 ATGは、アート系作品の普及を目的に、川喜多かしこの活動を契機に1961年発足。大島渚、羽仁進、今村昌平、森田芳光などを育て、支え、1992年に活動停止。 増村は、…

【映】さよなら、人類(ロイ・アンダーソン)

ブラックでシュールな作品、ベネチア金獅子賞、ということで観てみたが。。2014年、100分、スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ合作。そうえいば、昔、いか天で同じタイトルの曲がはやったなぁ、などと回想。 オープニングの空気から、常識的でも計…

【音】都響 第953回定期演奏会Aシリーズ:小泉和裕(2022/06/13)

待ちにまったはじめての東京文化会館。朝からわくわく。 1961年竣工の建物は前川國男設計。打ちっぱなしコンクリートに、落ち葉をイメージしたタイル床、舞台両袖の大小さまざまのブナ材レリーフが独特の雰囲気をつくる。座席幅はきゅうきゅう。加藤周一は、…

【音】オルガンプロムナードコンサート(サントリーホール 2022/06/09)

お昼のα波タイム。この日は、バッハ、カルク=エーレルト(1877-1933)、メシアン(1908-92)、エベン(1929-2007)から。オルガンは小田龍一郎さん。 カルク=エーレルトはドイツの作曲家。グリーグに認められ、シェーンベルクやドビュッシーに心酔。“その影…

【美】THE GREATS スコットランド国立美術館展(東京都美術館)

1859年開館のスコットランド国立美術館の作品からルネサンス以降を中心に展示。ラファエロ、グレコ、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、スーラ、ルノワールなど。習作も多数展示。音声ガイドは天海祐希さん。 はいって一枚目、「グラスマーケットから見た…

【映】ポンヌフの恋人(レオス・カラックス)

ウォッチリストから。マノンレスコーを読んでいて、なぜか思い出して観る。1991年、125分、フランス。「存在の耐えられない軽さ」「トリコロール 青の愛」「ショコラ」で有名なジュリエット・ビノシュ出演。 立ち入り禁止のポンヌフ橋で生活する大道芸人アレ…