モグラ談

40代のリベラルアーツ

【美】生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎(アーティゾン美術館)

1882年に久留米でともに生を受けた二人。日本の洋画が成熟に向かう中で、それぞれ独自の作風を探求。28歳で夭折した青木、40歳前にしてパリ留学を経て緩やかに画風を変化させていった坂本。同郷の二人の回顧展。 青木は、記紀万葉などの日本の神話から着想を…

【映】クロッシング(アントワン・フークア)

イーサン・ホークwithトレーニングデイのアントワン・フークア監督。間違いない組み合わせなのにまだみてなかった!2008年、132分、米。 悪徳刑事のイーサン・ホーク、うだつのあがらない引退間近の刑事にリチャード・ギア、おとり捜査官としてマフィアに潜…

【映】ハート・ロッカー(キャスリン・ビグロー)

ふと戦場ものを観ようとウォッチリストから。キャスリン・ビグロー監督は本作でアカデミー賞女性初の監督賞。主演はMI6、ボーン・レガシーのジェレミー・レナー。ガイ・ピアースが登場するも冒頭限り。傭兵役のレイフ・ファインズが限られた出番だがいい味。…

【映】さらば、愛の言葉よ(ジャン=リュック・ゴダール)

ふと思い出して観たのが逝去の数日前。偶然。2014年、69分、仏。 断片的な映像を伴った詩の積層、いやパッチワークか。カラーとデジタルが新鮮さを感じさせるが、やはり変わらぬゴダール作品。観る者の脳波を麻痺させる瞬間を投げかけられ続ける。むしろ年と…

【映】ノマドランド(クロエ・ジャオ)

「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンドに惹かれ最新作を。クロエ・ジャオ監督も気になっていた。アカデミー賞(2021)で作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞。2020年、108分、米。 夫を亡くし、職を失ったファーンはノマドとしてヴァンで暮ら…

【映】神様メール(ジャコ・バン・ドルマル)

“神は実在し、ブリュッセルに住んでいる”という設定。「トト・ザ・ヒーロー」「ミスター・ノーバディ」のジャコ・バン・ドルマル監督作品。ファンタジックな世界観。2015年、115分、ベルギー・仏・ルクセンブルク合作。 神は初めにブリュッセルを創り、家族…

【映】グリーンブック(ピーター・ファレリー)

とてもよかった!!“最強のふたり”(11)で思い出して視聴。ファレリー監督は“メリーに首ったけ”(98)などのラブコメやジム・キャリーのコメディなどで実績。本作でアカデミー賞(19)作品賞、脚本賞、助演男優賞。2018年、130分、米。 人種差別が根強く残…

【英】最強のふたり(エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ)

タイトルとジャケットの印象がなんかひっかかってウォッチリストに保蔵のままになっていた一作。いよいよ拝見。イメージと違った。とても素晴らしい作品! この後、ハリウッドでリメイク。2011年、113分、仏。 事故で首から下に麻痺の障害を持つ大富豪のフィ…

【映】パンズ・ラビリンス(ギレルモ・デル・トロ)

“シェイプ・オブ・ウォーター”(17)に続きデル・トロ作品。アカデミー賞(07)撮影賞、美術賞、メイクアップ賞。題名の“パン”はギリシャ神話の牧羊神。彼が少女を異界に導く。2006年、119分、スペイン・メキシコ合作。 スペイン内戦下の1944年。山中に立て…

【映】ムーンライト(バリー・ジェンキンス)

前情報なしで鑑賞。なるほど、これまで描かれてこなかった世界。すばらしい作品。アカデミー賞、作品賞、助演男優賞、脚色賞。ブラッド・ピット製作総指揮。2016年、111分、米。 恵まれない家庭環境、貧困・犯罪地域で生きる少年の成長を、少年期、ティーン…

【映】帰ってきたヒトラー(デビッド・ベンド)

ドイツのベストセラー小説の映画化。ヒトラーが現代にタイムスリップ。コメディでもあり目前に潜んでいる再来への警告でもある。2015年、116分、独。 1945年から2014年にタイムスリップしたヒトラー。偶然、ロケ中のテレビの背景に映り込み、レイオフされた…

【映】スリー・ビルボード(マーティン・マクドナー)

名演技が十二分に引き出された良質なドラマ。フランシス・マクドーマンド主演、本作で二度目のアカデミー主演女優賞。2017年、116分、英。 娘を殺された母親、捜査不十分として所轄署長を路上看板で批判。ガンで余命短い署長、差別意識の強い巡査、同情する…

【映】シェイプ・オブ・ウォーター(ギレルモ・デル・トロ)

「ナイトメア・アリー」がよかったので、デル・トロ監督からもう一作。2017ベネチア金獅子賞、2018年アカデミー作品賞ほか4部門受賞。2017年、124分、米。R15+の大人のファンタジー。 政府の研究所で清掃員として働くイザイラ。研究材料として持ち込まれた魚…

【映】ザ・スクエア 思いやりの聖域(リューベン・オストルンド)

2017年パルムドール。2017年、151分、瑞、独、仏、丁合作。 モダンアートの美術館でキュレーターをつとめるクリスティアン。思いやりの心や平等の精神を表現する作品を通じ、差別や貧困問題に一石を投じる企画を立ち上げる。そんな中、財布とスマホの盗難に…

【映】ナイトメアアリー(ギレルモ・デル・トロ)

デル・トロ作品、「シェイプ・オブ・ウォーター」と迷いまずこちらから。ブラッドリー・クーパー主演。2021年、150分、米。冒頭、久しぶりのSEARCH LIGHT PICTURES(旧21世紀FOX)のオープニングに感動。 サーカス団に流れ着いた浮浪者スタンは職を得て、手…

【映】アンテベラム(ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ)

「ゲットアウト」「アス」のプロデューサー作品ということで期待して視聴。2020年、106分、米。 社会学者として活躍するベロニカ。一方で、南北戦争下で虐げられるエデン。ふたつの物語が併走し、合流する・・・。 中盤までの40分、プランテーションでの虐げ…

【映】オールド(M・ナイト・シャマラン)

ふと思い出し、久しぶりにシャマラン作品。主演のガエル・ガルシア・ベルナルは「ブエノスアイレスの夜」以来なので20年ぶり。お互い年をとったな、と軽い感慨。 家族で訪れたリゾート。ホテルのマネージャーからプライベートビーチに招待される。そこで異様…

【映】ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(ライアン・ジョンソン)

「スターウォーズ 最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督、アガサ・クリスティ作品へのオマージュ、密室もの。探偵役にダニエル・クレイグ。2019年、131分、米。 富豪の小説家の死をめぐる密室ミステリー。警察は自殺と判断するが、匿名から依頼を受け…

【美】故宮の世界(東京国立博物館)

日中国交正常化50周年記念。故宮博物院の名作を主にデジタル映像で展示。 デジタル映像、凸版印刷の技術力、大画面、精細、鮮明、リアリティを失わせるほどの輝度。紙の図版とは比べ物にならない。でも模倣品でもリアリティにはまだかなわないかな、あるいは…

【美】自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで(国立西洋美術館)

リニューアルオープン記念。ドイツのフォルクヴァング美術館の協力を得て開催。急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけ、芸術家たちは新たな知識とまなざしで自然を捉えていった。印象派、ポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100…

【映】プロミシング・ヤング・ウーマン(エメラルド・フェネル)

気になってた一作。キャリー・ハンナ・マリガン主演。どこかでみたことあると思ったら“華麗なるギャッツビー”だった。フェネル監督、初長編映画。しっかりえぐってくる。アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞受賞(2021)。…

【映】グランド・ブタペスト・ホテル(ウェス・アンダーソン)

ジャケレンタル。“ダージリン急行”のウェス・アンダーソン監督。2014年、100分、アメリカ。 わくわくさせる語り口からのオープニング。欧州名門のグランド・ブタペスト・ホテル。季節ごとに予約するかつてのオーナー。ホテルの歴史を訪れた作家に語る・・・…

【映】Us アス(ジョーダン・ピール)

涼をとろうとホラー。“ゲットアウト”で面白かったジョーダン・ピール作品。2019年、116分、米。ピール監督、コメディアン出身。才能豊か。 なんでもない浜辺の遊園地のオープニングなのにすでに不穏な空気に満ちる。日常シーンに緊張感を強いる。冒頭から良…

【本】戦略的思考とは何か(岡崎久彦)

いわゆる最近の思考法本ではない、骨太の戦略的なものの見方を、軍事防衛戦略を主題に解く。名著。 著者は、戦前生まれの外務官僚。調査畑を経て、初代情報調査局長。サウジとタイで大使。祖父は陸奥宗光の従弟。 “日本人は論理的思考が苦手であり、戦争のよ…

【映】今夜、世界からこの恋が消えても(三木孝浩)

嵐から“なにわ”に転向した娘とハンカチ握りしめて劇場へ。2022年、121分。道枝駿佑、福本莉子主演。主題歌ヨルシカ。 一条岬氏のライトノベル原作。韓国でも話題になった。韓国×恋愛×記憶、だと、嗚咽した“私の頭の中の消しゴム”を思い出す。あわせて、記憶…

【映】殺人者の記憶法(ウォン・シニョン)

韓国映画の気分でウォッチリストから。2017年製、118分、韓国。 アルツハイマーにより記憶に障害を抱えるビョンス。子供時代の父親殺し以降、悪とされる人を殺すことで心の善を保ってきた。娘が育ち、殺人から離れたビョンスであったが、猟奇殺人犯との接触…

【映】EUREKA ユリイカ(青山真治)

Helpless、本作、サッドヴァケーションの九州サーガ三部作と呼ばれるものの二作目。カンヌで国際連盟批評家賞、ノベライズは三島由紀夫賞。2000年、217分! バスジャックに巻き込まれた運転手と兄妹。トラウマから逃れられない人生が出会い、再び歩みだそう…

【映】コーダ あいのうた(シアン・ヘダー)

“愛のコリーダ”となぜかオーバーラップしてしまったが全然関係ない作品。まえから気になっていたものをウォッチリストから。2021年、112分、米仏加合作。サンダンスで4冠、2022年アカデミー賞では作品賞を含む3冠。2014年の仏「エール」のリメイク。どちらを…

【TV】NHKアカデミア 細田守

第一線のクリエイターや研究者が職業観、人生観などを熱く、自由に語る番組。細田守監督の回(7/26)はなかなか印象に残る素敵な番組だった。 監督の仕事とは、“作品を全体として面白くする仕事”。そのために全体をデザインする。ひとつの作品に絵コンテ500…

【映】楽聖ショパン(チャールズ・ビダー)

音楽史の読書から派生してアマプラより。1945年、アメリカ、111分。 祖国ポーランドの独立への想いを秘めつつ、天賦の才能をひろげるため師エルスナー教授とパリに向かう。祖国への想いとの葛藤、ジョルジュ・サンドとの出会い、病との闘い。リスト、パガニ…